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ポンプ加工におけるサイクルタイム短縮技術|“ワンチャッキング完結型”マシンの開発について

ポンプ加工におけるサイクルタイム短縮技術|“ワンチャッキング完結型”マシンの開発について | ブログ

私たちの暮らしを支えるポンプ

産業におけるポンプとは、液体や気体を移送させるための装置を指します。

ポンプは高層ビルの最上階に水を供給したり、化学プラントで異なる気圧の場所に気体を送ったりと様々な産業で、重要な「移送導線」として機能しています。

そんなポンプの製造には極めて高度な技術と精密さが要求されますが、なぜそれほど”高い精度”が求められるのでしょうか?

その答えは、ポンプが扱う「移送物」にあります。

産業ポンプの移送物と「精密さ」の関係

上でも紹介したように、ポンプは主に「液体・気体」を運びますが、これらは性質上わずかな隙間からも漏れ出してしまいます。

特に工業利用されるポンプであれば、原油や天然ガス、エチレンなどの危険物を移送するケースもあり、これらの漏出は安全面からも絶対にあってはなりません。

また、高温・高圧での使用や、腐食性の強い物質の移送など、過酷な条件下で使用されることも多いため、ポンプには「絶対的な精度・耐久性」が求められるというわけです。

精度を追求する反面、加工時の“サイクルタイム”が課題に

産業用ポンプを製作する上で、その構成部品は綿密で丁寧な加工が不可欠なわけですが、その反面「1製品あたりの加工時間(サイクルタイム)の増加」が業界として大きな課題となっています。

では、具体的にどのような要因がサイクルタイム増加の原因となっているのか、加工方法に触れながら解説していきましょう。

【具体的な課題】ポンプケーシング加工では「二度手間」が起こっている

そもそもケーシングの加工には、主に2つの工程があります。

1. 端面加工:ポンプケーシングのフランジ部や端面の形状加工と面取り、表面粗さや全長を図面指示通りに精密加工する工程。

2. 内径(インロー)加工:ポンプケーシングの内径を寸法通り精密に加工する工程。

ここで注目すべきは、ポンプケーシング筒状部品には両端に加工箇所がある場合が多く、両端面・両インローの加工が必要になるという点です。

現在汎用の加工機械では、これらの加工を「片面ずつ」しか行えないものがほとんど。

そのため、以下のような手順を踏む必要があります。

手順1:まずは「片側の加工」を完了

手順2:機械を停止、加工箇所の計測

手順3
:ポンプケーシングを治具から取り出し、反転させて再クランプ・加工ツールを付け替え

手順4
:「反対側の加工」を開始

この一連の流れや反対側の加工前の段取り作業が、全体のサイクルタイム増加につながっているのです。

山科精器の解決策は、“ワンチャッキング完結型”のマシン開発

これらの問題を解決するため、当社で研究・開発を行ったのが、ワンチャッキング完結型の加工マシン「FLEX U+(プラス)」です。

FLEX U+は、ワーク(被加工物)を回転させることなく高効率な旋削加工を実現します。さらに、対向または3方向からの同時加工が可能となり、サイクルタイムの大幅な短縮を達成しました。

またATC(工具自動交換装置)を搭載しているため、複数の工具を使用する複雑な形状の加工もスムーズに行うことができます。

長尺ワーク向けの「中空NCフェーシング」も開発

特に長尺ワークの加工に対応するため、FLEX U+の派生マシンとして「中空NCフェーシング」も開発しました。

本機は長尺ワークの中央部を加工する際に、主軸が近づいて加工できます。コンパクトなツール(刃具)を使って加工できるので、汎用的なマシンではロングツールとなって精度が出しにくい加工箇所でも、精度変化の少ない加工ができます。

また産業用ポンプケーシングは製缶品や鋳造品であることが多く、この場合、外径には基準にできる所がない上、内径中央部が既に加工されていることもあります。そのような場合は、ワークにコレットを差し込み、「中空NCフェーシング」の後部からクランパーがせりでて来る機構にすることで解決できます。これは主軸ユニットが中空であるが故に実現できるのです。

このように当社では、お客様の加工ワークに合わせたマシンのカスタマイズも可能です。

産業用ポンプケーシングをはじめとする、ワンチャッキング完結加工が有効なワークや、長尺ワークの加工、その他お悩みのワーク加工に関する課題がございましたらお気軽にご相談ください。

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山科精器(株)ビジネスソリューション

山科精器(株)のマーケティング部門、営業部門の機能を有するセクションです。ファクトリーオートメーションや工作機械の分野で豆知識などの情報発信。お困りごとがございましたら是非ご相談承ります。

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